2008/11/16
ダウンタイム
先日、ある方がアトリエ引越しのお祝いに「月丸くん」
という愛媛県の低農薬レモンをお送り下さいました。
とっても爽やかな引越し祝い、嬉しかったです。
それでいま、アトリエの生徒達は絵を描いた帰りに
ひとり一個づつレモンを持って帰っています。
なかなかいい光景です。
さて、
1週間ってあっという間だなー、とか
1ヶ月ってあっという間だなー、とか
思ってるうちに
ふと、何年か前のアトリエでのエピソードを思い出しました。
ダウン症の人たちと一緒に学校を作ろう!とエコールを始めた頃、
教室として借りたお部屋は当然まっさらな状態で、
荷物を入れる棚も、ハンガーも、スリッパも、
なーんにもなかったので、ひとつひとつ手作りをしたのでした。
自分たちの教室を作る、それが最初の授業でした。
ある時みんなとカレンダー作りをしていた時のこと。
4人中2人の生徒が作ったカレンダーは
日にちも曜日も1週間で区切らずに、
ずーっと連続して描かれていたのでした。
いわゆる普通のカレンダーだと
月火水木金土日
1234567
となっていますが、
2人が作ったカレンダーは、
月火水木金土日月火水木金土日月火水木金〜
となっていて、
31日の後はフツーに32日、33日、34日と続いていたり、
12月の後は13月だったり、
かなり画期的なカレンダーになっていたのでした。
それを見て当時の私は
「1週間って7日なんだよー
31日より多くなったりしないんだよ。」
と、なんとか日にちの感覚を教えようと試みたのですが
何回説明してもうまく伝わらない・・・。
そして彼らに説明しているうちに、
(あれ?もしやこの人達の感覚の方が正しいかも。)
と思い始めたのでした。
1週間や1年や24時間って、一応決まっているけれど、
よく考えたら全部繋がってるんだしな、と。
そしたら31日の後は32日の方が分かりやすいかもしれないし、
12月まで行ったら1月に戻らずに13月、14月と
前に進んだ方が自然かもしれないし、
大体、時間を区切るっていう事自体が不自然だよな、
と、どんどんダウンタイムに呑まれていったのでした。
この時から
ダウン症の人たち独自の時間感覚があるっぽいぞ、
物事をもっとずっと広いスパンで捉えているみたいだぞ、
そして、それは私たちが遥か昔に持っていた豊かな感覚じゃないのかな、
だったら今、私たちの方が学ばせてもらわなくっちゃ、
と思うようになりました。
彼らと色々な時間の話をする中で
決して数字に弱いとか、そういう事ではなく
色々感じながらの13月や32日だという事が
よく分かったのでした。
その時の衝撃は今も忘れられません。
アトリエではアトリエ部分に入ったら
そこは完全にダウン症の人たち中心のリズムになっています。
32日、13月の世界です。
どんなに忙しい記者の方でも、テレビ局の方でも
一旦はダウンワールドに浸っていただきます。
そして見学にいらした方はよく
「ここで会うと、ダウン症の人たちが全く障害者に見えないのがフシギです。」
とおっしゃります。
そして帰られる頃には
「今までの自分の生き方が不自然な気がしてきました。」とか、
「今度、シゴト抜きでも来ていいですか?」とか、
とおっしゃる方も多く、
実際に仕事の件が終わっても遊びに来て下さります。
また、アトリエに来る学生たちの中では
学校では仲よくなかったのに、アトリエで仲よくなった
というケースもたくさんあります。
アトリエでダウン症の人達を真ん中にして
人と人の関係が自然に作られていくのを見ていると
カレンダー作りの時に言われた一言、
「だって全部繋がってるじゃん!」
を、思い出す毎日です。
写真の2人はアトリエで友達になった学生コンビ、
モロちゃんとアカ姉さんです。